どうも、みずきちです。
突然ですが、問題に答えてみてください。
7+8=?
信号の色は青と黄色とあと一つは?
悩んで答えをひねり出す人はほとんどいないと思います。
では、次の問題はどうでしょうか。
76×34=?
すぐにわかりましたか?
時間があれば答えを導き出すのは難しくないでしょう。
でも上の二問のように瞬時に答えは出てこなかったのではないでしょうか。
最後にもう一度だけ問題を解いてみてください。
スニーカーと靴下をセットで11,000円支払いました。
スニーカーは靴下よりも10,000円高いです。靴下の価格は何円でしょうか?
あなたの脳内にはすぐに答えが出てきたかもしれません。「1,000円」だと。
でもそれは間違いです。仮に靴下が1,000円だとすると、スニーカーは11,000円ということになり合計すると12,000円になってしまいます。
正解は500円です。するとスニーカーは10,500円で足すと11,000円になります。
改めて計算をするとなんとも簡単な問題ですよね。
最初の二問では難なく正解をはじき出してくれた直感が間違えました。
これはいったいどういうことでしょう?
「ファスト&スロー」という書籍に答えが書いてあります。
今回はこの書籍を紹介します。
ファスト&スローとは
行動経済学を勉強したい人は必ず読むべきといっても過言ではない名著です。
著者のダニエル・カーネマンは心理学者ながらノーベル経済学賞を受賞しました。
カーネマンは昨今話題の行動経済学の祖と言われるくらい行動経済学分野に影響を与えた人物です。
ファスト&スローにはなぜ人が判断を誤るのか、意思決定に失敗するのかといった人の合理的ではない部分がこれでもかと記されています。
・システム1とシステム2
・エコンとヒューマン
・経験する自己と記憶する自己
上の3つの対立と、プロスペクト理論についてそれぞれ簡単に説明します。
システム1とシステム2
システム1、システム2とは心理学者のキース・スタノビッチとリチャード・ウェストが呼びはじめ、カーネマンが広めた名称です。
システム1は直感的かつ自動的に素早くほとんど努力を必要とせず、自分でコントロールしているといった認識は一切ありません。一方システム2は遅いスピードで、意識をしないと働かない代わりにより複雑な意思決定をしてくれます。
一言で説明するとシステム1は直感、システム2は熟慮と言えるかもしれません。
冒頭の問題でいえば、7+8の答えが15であることや信号の残り一色が赤であることはシステム1が直感で教えてくれ、76×34の答えが2,584だとはシステム2を使わないと出すことができません。
システム1の自動的思考をシステム2がきちんと監視してくれていればいいのですが、システム2は「怠け者」でしばしばシステム1の提案をそのまま受け取って承認してしまいます。
その結果、スニーカーと靴下の問題のように人は判断を誤るのです。
ちなみに本書ではバットとボールで金額はあわせて1ドル10セントです。
ドルではいまいちピンとこないかもしれないので円に換えて問題にしてみました。
エコンとヒューマン
経済学において、人は意思決定たとえば買い物をするとき市場にあるすべての商品を比較し、最も効果の高いものを購入するとされています。完全に合理的で、超利己主義です。自分の利益が最大化される行動しか取りません。このような人間を「ホモ・エコノミカス」といいます。
現実はどうでしょう。あなたはダイエットを誓ったのについついケーキを食べてしまったことがあるかもしれません。よく考えれば別にいらないものをなんとなく買ってしまった経験があるかもしれません。困っている友達に対して見返りなど求めずに助けることもあるでしょう。
人は完全に合理的でもなければ超利己的でもありません。無駄遣いもするし、選択ミスもします。
人が困っていたら助けたいと思います。
ほどほどに合理的で、ほどほどに利他的なのが現実の人間ですよね。
本書では合理的なホモ・エコノミカスを「エコン」、
人間味あふれるあなたのことを「ヒューマン」と分類して分けています。
経験する自己と記憶する自己
例えば内視鏡検査や注射のような苦痛の伴う検査があります。
苦痛を数値化できるとして最大が10だとします。
平均すると体感する苦痛の値が同じで、最後が最も苦しく終わるよりも緩やかに苦痛が和らいで終わる検査のほうが後から振り返ると苦痛が少なかったと感じる傾向にあります。
これをピークエンドの法則といい、記憶に基づく評価は苦痛のピーク時と終了時の平均でほとんど決まります。これだけならそこまでおかしく感じませんよね。
では、検査時間が異なるとどうでしょうか。
同じように同等の苦痛を体感する検査で、最後が最も苦しいが10分で終わる検査と、緩やかに苦痛が緩和される代わりに20分間続く検査を比較してみましょう。
驚くことに苦痛が徐々少なくなるほう、つまり長時間苦痛が続くほうを好ましく感じるという傾向にあったのです。繰り返しますが苦痛の平均値は変わらないので、終わりが楽なだけでただ苦しい時間を長期間過ごしたほうが記憶を振り返ると楽だったように感じるのです。
「経験する苦痛」と「記憶に残っている苦痛」はどちらを優先するべきなのでしょうか。特に医療現場では重要な課題として取り組む必要があります。
プロスペクト理論
選択の結果が得をするのか損をするのかわからない、不確実な意思決定において人は損失回避的になるという理論のことをプロスペクト理論といいます。
たとえば確実に9,000円もらえるか、90%の確率で10,000円もらえるけれど10%の確率でなにも貰えないという選択肢があればどちらを選びますか?
おそらくあなたは確実に9,000円もらうことを選択したでしょう。
10%の確率でもらえない10,000円、違う選択をしていればもらえたはずの9,000円を損失と感じて損失回避的な意思決定をしたといえます。
次に、確実に9,000円支払うか、90%の確率で10,000円を支払う必要がある場合はどうでしょう。10%のギャンブルに勝てば1円も支払う必要がありません。
あなたはギャンブルに打って出ませんでしたか?
プロスペクト理論の重要な点として、現状が損失であればギャンブル志向になるというものがあります。
パチンコや競馬で、負けているから一発逆転を狙う人はまさにプロスペクト理論においてギャンブル志向になっているといえます。そして大体の場合で傷口が広がるのですが…。
あなたはそんな経験はないですか?
まとめ
ファスト&スローの内容を簡単に説明してきました。
・システム1とシステム2
・エコンとヒューマン
・経験する自己と記憶する自己
・プロスペクト理論
特にページ数を割いている内容に絞り、さらにめちゃくちゃ掻いつまんで説明しています。
本書を読むことでより一層深い理解を得られるうえ、この記事では触れていない意思決定の誤りについて非常にわかりやすく書かれています。
行動経済学、ビジネスにおいて必読書といって差し支えないものですので、少しでも興味がある方はぜひ手に取ってみてください。
行動経済学はどんどん注目されてきています。
今のうちに知識のアドバンテージを手にしてみてはいかがでしょうか?
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